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 「罪なき陰謀」
 
     
 

 今日も今日とて大量の仕事に埋れていた浩瀚のもとにひとりの胥吏が訪れたのは、景王赤子の治世も黎明期と呼ばれる時期を脱し、人々の生活にようやくの平安が訪れるようになったある日の午後のことである。
 「冢宰さま、文が届いております」
 その声に浩瀚は顔を上げて筆を置いた。恭しく差し出された文を受け取って差出人を確認すれば雁州国芳陵壁落人とある。
 「御苦労。さがってよろしい」
 鷹揚に告げると、胥吏はひとつお辞儀をしてから部屋を出て行く。その姿を確認してから浩瀚は文を開いた。
 内心では歓喜に胸が躍っていた。ここしばらく浩瀚が心待ちにしていた文である。はやる心をおさえながら文を開けば、どことなく几帳面さをうかがわせつつも流麗な筆致が目に飛び込んでくる。その字体からは、人生の晩年を迎えた人間の穏やかな心境と寛容さがにじみ出ているようであった。
 これまでも彼とは幾度となく文を交わし、蓬莱の事情や海客の習慣などについて助言をもらっていた。そういう時の文は、非公式ながらも一国の官吏からの書簡としての体裁を整えていたためだろう。戻る文も、見事な文語体で書かれていた。それは、知らぬ者が見れば到底一介の海客がしたためたものだとは信じられないほどしっかりしたものであった。
 しかし今回浩瀚は、一個人として文を出した。特にそうと書いたわけではないが、そういう心境でもって文を書いた。相手は文体と筆致と行間からそれを察したのだろう。戻った文もまた、今までと違った随分と砕けた文体で書かれてあった。
 そのことに浩瀚は思わず表情をゆるめた。


 ―――お久しぶりでございます。
 あなた様を始め、慶の方々はお変りなくお過ごしでしょうか。私の方はと言えば、相変わらずの有様で、悠々自適な隠居生活をのんびり過ごしております。ただ、振り返ればこちらに流れ着いてからすでに五十有余年。異界の片隅で穏やかな余生を送っていることが信じられぬような、あるいはあちらにいたことこそが夢まぼろしであったのではないかと思えるような、不思議な感覚を抱く今日この頃でございます。
 さて、お尋ねにあったことでございますが、今申し上げたように、私はすっかりこちらになじみ過ぎて、あちらの文化風習には全く疎くなってしまいました。私の知っている知識のみでお返事申し上げてもあなた様のお役には立つまいと思い、知り合いの海客に色々とたずねて回りましたのでその結果をご報告したいと思います。
 ただ、調べてみて私自身が思ったことなのですが、やはりこの手の風習については時代によって随分と変化するようにございます。流れ着いたばかりの海客に聞いた話と二十年以上も前に流れてきた海客に聞いた話とでは若干ではございますが違いがございますし、また、流れてきた年齢によっても感覚の違いというものがあるようにございます。
 それで僭越とは思いましたが、あなた様がこのようなお尋ねをなさるのは、ひとえにあなた様の敬愛する彼の方の為であろうと推察し、彼の方とほぼ同じ年代の海客から聞いた話をお伝えすることといたします。


 浩瀚はそこまで文を読んで、思わず苦笑を洩らした。やはりこの文の主は、自分の思いを正確に読み取ってくれたらしい。どこか面映ゆくあるが、正直ありがたかった。
 浩瀚は先に続く文章を、一字一句脳裏に焼きつけるように丁寧に読み進めた。


 ―――あちらで贈り物をする日といえば、誕生日、クリスマス、バレンタインが最も主となる三大行事のようです。婚姻している者であれば、これに結婚記念日というのが加わるのですが、彼の方が大公をお迎えになったという噂は未だ聞きませんので、今回は関係のないお話でしょう。
 さて、この中でバレンタインについては、私があちらにいた頃はなかった風習のためよくよく訊ねてみたところ、二月十四日に女性から男性にチョコレートという菓子を渡して愛を告白する日なのだそうです。異国から入ってきた風習らしいのですが、お菓子会社の宣伝と相まって瞬く間に蓬莱で認知されるに至り、今ではお祭り騒ぎといっても過言ではないほどの盛り上がりを見せる一大行事になっているとか。最近では一概に女性から男性に愛の告白をする日とも言えない変化を見せているようですが、彼の方にしてみればやはり、男性から贈り物をする日ではないという意識があるのではないかと思います。
 次にクリスマスですが、これは十二月二十五日に行う、もともとは異国の宗教の行事だったのですが、祝い事という所だけを蓬莱が取り入れ、今ではすっかり年中行事として定着しているものです。幼い子供を持つ家族は家庭で過ごし、親から子へ贈り物をするのが一般的ですが、若い男女は恋人と過ごし贈り物をしあいます。ここで重要なのは、クリスマスを共に過ごす男女はすでに恋人同士であることで、この日を一緒に過ごし贈り物をするためには事前に愛を請うて受け入れてもらっていなければいけません。そして朝まで共に過ごす―――ということは何を意味しているのか最後まで書かずともお察しでしょう。つまりは、若者たちにとっては、より深い仲になるための行事なのです。
 なので、あなた様のお尋ねの件に最もふさわしい日といえば、恐らく誕生日ではないでしょうか。あちらでは生まれた日を特別な日としてとても大切にします。この日は、親しく親交のある者であれば誰が贈り物をしても自然です。宴席を設けてもおかしくありません。贈り物の内容についても、相手が喜びさえすればこれといって決まった物があるわけでもありません。
 あと、付け加えるならば、蓬莱の女性はサプライズというのが大好きだということでしょうか。これは、驚きや不意打ちという意味の言葉で、祝う相手を驚かせるために秘密裏に宴席や贈り物の準備を進め、突然知らせるのです。主賓は自分の知らないところでそういう計画が進んでいたことに驚き、喜ぶのです。
 さて、このような所であなた様のお尋ねにお応えできたでしょうか。
 あなた様の罪なき陰謀が成功しますことを心より願っております。

 壁落人からの情報提供を受けて浩瀚の「罪なき陰謀」は動き始めた。
 「罪なき陰謀」とは言わずもがな、浩瀚が敬愛してやまぬ緋色の女王を喜ばせることである。
 さてそれで、計画遂行の日を壁落人の助言通り陽子の誕生日と定めた浩瀚は、まずは陽子の誕生日を調べることとした。そして、それはさして難しくはなかった。景王赤子のことについては、すべてが赤書に記載される。こちらに生まれれば両親の名前からどこの里木に帯が結ばれて実が成り、いつ誕生したかまで戸籍を調べて記載されるのだ。陽子は胎果だからこちらに渡って来てからの記録しか書けないが、それでも彼女が自己申告した生年月日は書いてあるはずである。
 王の史書は宮中にて厳重に管理され誰もが目にすることができるものではないが、冢宰の権を使えば無理なことではない。しかしそんな、如何にも陰謀めいた手段を用いずとも、当たり障りない会話の中で彼女自身から聞きだすことも浩瀚には難しくはなかった。
 さて、決行の日は決まった。だが次の、何を贈るかで浩瀚は非常に迷った。
 「さぷらいず」を成功させるためには、陽子が喜ぶものを用意しなければならないのだ。万に一つも抜かりがあるわけにはいかなかった。
 浩瀚は考える。
 女性の多くは装飾品や美しい衣装が大好きだ。だが、陽子があまりそれを望まないことは周知の事実である。だが、別に陽子はそのすべてを嫌っているわけでもないことを浩瀚は知っていた。
 意匠によっては陽子とて装飾品のたぐいに興味を持つことがある。それはおおざっぱに言えば、派手ではなく控えめでありながらどこか目を引くもので、例えて言うなら、ついている石は小さいが珍品中の珍品と呼ばれる石がはめ込まれていたり、全体的に地味に見えてよくよく見れば細やかな意匠が施してあったりするものだ。
 しかし、では何を贈るか、と考えると簡単には思い浮かばなかった。それまで目にしてきた、陽子が装飾品に興味を示した貴重な場面をひとつひとつ思い返してみても、関心はその時限りであるからだった。気に入って頻繁に身に付けるという物は特になく、装飾品のたぐいは常に女官が用意した物の中から選んでいるようである。というよりも、女官らが用意した装飾品の数を如何に減らすかに心血を注いでいる感が否めない。
 そんな彼女が喜ぶ物。考えに考えに考えて、ここはやはり彼女をよく知る人物に協力を仰ぐべきだろうかと浩瀚は思った。
 幸いなことに最高の適任者がいる。
 孫祥瓊。女王の身近に仕える女史にして、彼女の気が置けない親友。出自は元芳国が国主の娘にて、芳の王宮に三十年住んで培われた審美眼は、あの氾王さえ認める本物である。
 助言を仰ぐ相手としてはこの上ない存在だ。
 ―――しかし
 と、浩瀚はためらった。
 誰かの力を借りれば自分の手柄は半減する。つまり、彼女の笑顔も喜びも自分だけのものとはいえなくなるのだ。「さぷらいず」に祥瓊の助力があったと知れば、当然彼女は祥瓊にもお礼を言うだろう。それは面白くない。
 浩瀚は顎に手をかけた。深く考え込んだ時の彼の癖である。その様子を見た下官が、気を利かせて入室しかけた足を止め、そっと引き返したが、浩瀚は全く気がついていなかった。
 陽子を喜ばせるための「さぷらいず」は、浩瀚のこれまでの人生の中で難題中の難題だった。しかし、その苦労が何とも甘美でもあった。


◇     ◇     ◇


 真剣な表情で書簡に署名をしたためていた陽子は、失敗せずに書き上げたことに小さく安堵の息をついた。筆立てにそっと筆を置き、書きたての書類を処理済みの山に積み上げる。それからその横の未決済の書類の山に目をやって、今度は盛大にため息をついた。
 ここ数日、やけに忙しい日が続いている。とはいえ、随分と政務に慣れた陽子にとっては音(ね)を上げるほどの量でもない。なのに今日に限って何となく仕事がはかどらないのにはわけがあった。
 実は今日は、陽子の誕生日なのだ。
 これまでも何度となく迎えてきた誕生日だが、今までは特に意識することもなくやり過ごしてきた。自身、当日すっかり忘れていた、ということだってあったほどだ。そもそもこちらではあまり生まれた日を重要視せず、誕生日を祝うという習慣がない。周囲がそんな調子だから、陽子とてさほど意識せずにきたのだ。
 しかし少し前、ふとしたことで浩瀚から誕生日はいつかと尋ねられた。なんてことない雑談の流れの中のことであったから、前後の会話の流れもあいまいなほどだが、それから妙に誕生日が気になってしまったのだ。
 それというのも、久々に聞いた誕生日という響きに、幼い頃のある記憶が蘇ってしまったからかもしれなかった。
 それは幼稚園の頃、お友達に呼ばれて出かけたお誕生日会だ。
 彼女の名前は、たしか梨奈といった。明るく活発な子で、二つ結びにした髪にかわいらしいボンボンをつけているのがトレードマークだった。長い髪はパーマをかけていたのかゆるくカールしており、フリルのついたピンクの服が良く似合う女の子だった。
 ある日その子に手作りのカードを渡されて、お誕生日会を開くから来てね、と言い添えられた。カードには、お誕生日会の場所と日時がウサギのイラスト入りで書いてあった。お誕生日会、というものに初めて招待された陽子は、戸惑いながらもドキドキしていた。なんだか特別な響きに聞こえたのだ。
 当日、いつもより少しおしゃれをした陽子は、母に持たされたプレゼントを持ってお誕生日会に出かけた。場所はその子の家で、明るく広々とした家は、どこもかしこもきらきら光っているように見えた。幼稚園の同じクラスの子がたくさん招待されていて、会の主役は、たくさんの子からプレゼントを渡され、お祝いを言われ、大きなケーキのろうそくを吹き消し、拍手喝采を浴びていた。そのすべてが、幼心にすごくうらやましかった。
 しかし、お友達を呼んでお誕生日会をしたいという陽子のささやかな夢は叶うことはなった。家に人を呼ぶことに父がいい顔をしなかったからだ。
 ―――そういえば私、すっごくお誕生日会にあこがれていたんだよなぁ。
 こちらで誕生日を祝う風習がなくても、自分から「お誕生日会をするからみんな来てくれ」といえば、鈴や祥瓊は喜んできてくれるだろう。―――おそらく、浩瀚も。
 しかし、いい大人が何を言ってんだか、という気持ちもあったし、誕生会を開くといっても結局準備は人頼み。料理のことだって膳夫を煩わせてしまうだろう。軽い思いつきでいろんな人に迷惑をかけるのもどうかと、うろうろと思い定められないでいるうちに、今日に至ってしまったのである。
 もはやいまさら誕生日会の企画はできない。だからすっぱりあきらめてしまえばいいのに、やっぱりもっと早く行動に移しておけばよかった、祥瓊にでも相談すればよかった、などと後悔が沸いて出てきて、仕事の能率に影響しているのであった。
 「おや、今日はなにやら気が乗らぬご様子ですね」
 突然の声に、陽子は驚いて顔を上げた。気がつくといつの間にか目の前に浩瀚が立っている。
 「あ、いや、そんなことはない・・・けど」
 陽子は、あわてて言い繕おうとして、それが無駄だと瞬時に悟った。なにせ、目の前の書類がまだ片付いていないのは隠しようがない。
 「―――もうちょっと時間をくれると助かるかな」
 もごもごと視線をそらしながら呟けば、浩瀚がわずかに苦笑した。
 「では、また後ほど参ることといたします。日の沈みきるより前には終わりますでしょうか?」
 ちらりと含まれた嫌味に陽子はわずかに口を尖らせたが、そもそもの原因が自分であるだけに意気地はすぐに砕けた。
 「大丈夫、だと思う。・・・・・・というか、思いたい」
 「どうやら、主上にはやる気の出るものが必要なご様子ですね。では、それを今日中に終わらせることができましたなら、すてきなご褒美を差し上げることにいたしましょう」
 「え!本当か」
 反射的に喜んで、陽子ははっとして表情を引き締めた。これではまるで手間のかかる幼子みたいではないか。
 「いや、私はご褒美なんかなくっても、ちゃんと仕事できるぞ」
 いい大人だからな、と続ければ浩瀚は、承知していますとも、と小さく笑う。
 「しかし、いい大人でも、ご褒美があったほうがやる気が出るものでしょう?」
 「まあ、それはそうかも」
 「なれば」
 楽しみに励まれませ、という言葉を残して浩瀚は去っていく。
 その背を見送ってしばし思案した陽子だったが、再び筆を手にした陽子の手は、随分と軽やかなものに変わっていた。

 さて、浩瀚の言っていたご褒美とはなんだろう。わくわくとした気持ちで仕事をすれば、なんともあっという間に片付いてしまった。自分の調子のよさにあきれつつも、時にはこんなときがあってもいいはずだと自分を弁護する。
 ―――ひょっとしたら、万華楼の月餅かもしれないな。
 それは近頃陽子がはまっている、堯天の菓子だ。しかし、堯天っ子に超人気のその月餅は直ぐに売切れてしまう上に、そもそも簡単に城下に降りることができない陽子にとってはなかなか買うことができない。どうしようもない時は、鈴にお使いを頼んだりするが、それだってそう頻繁というわけにはいかない。その不満を、茶話の合間に浩瀚にぶつけたのはつい先日のことだ。
 ―――いや、でも浩瀚がご褒美を言い出してから買いに行っても売り切れている時間のはずだ。
 先日はそんな話もしたのだから、浩瀚も知っているはずである。ということは、月餅ではない。
 ―――だったら、風雅屋の団子かな。
 あそこの餡団子は最高なんだよな、と思った途端、思わずよだれが出る。あわてて袖口で拭いながら、あるいは金平糖かもしれない、とも思った。疲れた頭には甘い物がよいと、一度浩瀚がくれたことがあるのだ。
 陽子があれやこれやと次々に食べ物ばかり思い浮かべていると、ようやく浩瀚が現れた。
 何を持ってきたんだろうと浩瀚の手元から懐辺りをじっと凝視するが、手には何も持っていないし、懐も特段膨らんでいない。
 あれ?と予想外のことに陽子は首をかしげた。ひょっとしたら浩瀚は、ご褒美の話を出しつつも今日中に仕事を終わらせられるなんてはなから無理だとでも思っていたのかもしれない。
 ふふん、それならそれで、お前の鼻を明かしてやろうじゃないか、と陽子は気を取り直す。
 「浩瀚。仕事は終わったぞ」
 これを見ろ、といわんばかりに陽子は処理の終わった書類の山を指さした。それを見て浩瀚がうなずく。終わっていたことに驚くかと思いきや、浩瀚の表情はまったく動かない。
 「確かに」
 「じゃあ、約束の物を」
 陽子が少々挑戦的な気持ちで手を出すと、浩瀚がその手に乗せたのは一枚の紙切れだった。
 「―――え?」
 あまりにも予想外の物に陽子は戸惑う。
 ―――ご褒美って、この紙切れ?
 いぶかしむ陽子に、浩瀚はにこりと笑う。
 「お約束の物は、そこに記してある場所にご用意しております。ぜひとも今日中にお受け取りにおいでくださいませ」
 浩瀚はそれだけ言うと、書類の束を抱えて去ってく。
 何がなんだかよくわからないままの陽子の手には、一枚の紙切れだけが残った。

 ―――ご褒美は、ここに書いてある場所に取りに来いって?
 陽子は手の中の紙切れに視線を落として思い切り顔をしかめた。
 ―――けど、紙には何にも書いてないじゃないか!
 そう、ぴらぴらとひっくり返して、表も裏も紙の隅にいたるまで凝視してみても、どこにも一文字も見当たらないのである。
 ―――渡す紙を間違えたんじゃないのか?
 しかしあの浩瀚が、そんなミスをするとは到底思えない。
 ―――あるいは、多忙極まってついにボケたとか!
 自分は書いたつもりだったけど書いてなかったとか、筆に墨をつけたつもりでついてなかったとか、ボケているならありえることだ。
 ―――いや、でもそれを認めたら今後の慶の行く末にも多大な影響が・・・
 陽子は自分の想像にぶるりとひとつ身震いをした。そして浩瀚ボケ説は、空恐ろしいことになると感じて無理やりに却下する。
 ―――浩瀚のミスでもない、ボケたのでもない、となるとあとは・・・
 「私の目がおかしい?」
 陽子は自分で言って、顔をしかめた。それもそれで、おもしろくない。そして直後、陽子はひらめいたようにぽんと膝を叩いた。
 「いや、あるじゃないか。一見書いてないように見えるけど、実は書いてあるって方法が!」
 つまりは、あぶり出しだ。砂糖水やレモン汁で文字や絵を書いて乾かし、あとで軽く火にあぶると書いた文字や絵が浮かび上がってくるというやつである。
 ということは、これもあぶり出しで書いてあるのかもしれない。と浮き足立って、陽子は直ぐに、いや、と自分の思い付きを否定した。
 浩瀚は、いついかなる時も抜かりない男だ。この一見何も書いていないかに見える紙から文字を浮かび上がらせる方法は、陽子が確実に知っていると浩瀚が認識している方法のはずである。そして、あぶり出しについては、浩瀚と話をした記憶がいっさいなかった。つまりは、浩瀚からしてみれば陽子があぶり出しという方法を知っているか否かは不確かなのだ。
 「たぶん、いやきっと、この紙に文字を浮き上がらせる方法は、浩瀚が私に教えているはずなんだ」
 おそらく、何てことない会話の中で。
 だからこそ浩瀚は、こういう手段を使ってきたはずである。
 陽子は、机に頬杖をつくと、ゆっくりと記憶をさかのぼりはじめた。そして、これまでに浩瀚と交わした話を思い出していく。
 先日の小休憩で話したことは、今年の正月は随分と温かかったということに始まった気温の話だった。その前が、離園の水仙はそろそろ見ごろを迎えるころだろうか、という話だ。その前が、蓬莱で話題沸騰ときく寄席競技会みたいなのを慶でもしたらどうだろうかという話で、その前が月餅の話だった。
 陽子はそこまで思い出して、小さく息をついた。
 ここまでは何の手がかりもない。
 陽子は気を取り直して更に記憶をさかのぼる。
 その前はお茶の話だった、その前は確か名前の話だった、その前はおそらく石に関する話だ。そして、その前は・・・。
 そこで陽子は、はたと顔をあげた。
 その前は、浩瀚がある物語の話をしてくれたのだ。
 ―――そうだ!その話の中に出てきたじゃないか。
 この紙切れと同じように、何も書かれていない手紙が。
 陽子は思い出して、勢いよく立ち上がった。やっとヒントを捕まえたことに、陽子は満面の笑みを浮かべていた。


◇     ◇     ◇


 ふふん、と陽子は不敵に笑う。
 さて、浩瀚の鼻を明かしに行ってやろう。そう思うと、わくわくとする思いがとめられなかった。
 何のつもりでこんな回りくどいことをしたのか知らないが、このくらいの謎賭けは自分にとっては朝飯前だと証明してやるのだ。陽子は手紙を懐に入れながら、先日聞いた物語の話を思い返す。それは、ひとりの男とひとりの女の悲しい恋の話だった。
 男と女は普通に暮らす普通の民だった。ある日二人は偶然出会い、たちまちのうちに恋に落ちた。二人は結婚の約束をし、半年後にはめでたく夫婦になる予定であった。
 しかし、そんな二人の仲を引き裂く事件が起こる。結婚の準備で街に出た女が、たまたま通りかかったとある大尽の目に留まってしまったのだ。女の美しさに惚れた大尽は、女に自分の愛人になるよう迫った。
 女は当然拒否した。結婚が決まっているとも告げた。しかし、そこで引き下がるような大尽ではなかった。大尽は女に、自分の物になればいかなる贅沢だってさせてやるし、老いた父や母の面倒を見、兄弟姉妹にも充分に暮らせるだけの金をやろうといった。あるいは、その夫になるという男にも。だが、あくまでも自分を拒否するというのなら、その全ての人間を容赦ない目に合わせてやろう、自分にはそれができるのだと女を脅した。
 女は苦しんだ。しかし、男への思慕はそれでも断ち切れない。女は男に手紙を出した。手紙には、大尽に言われたことをすべて書いて、私を連れて逃げてほしいと懇願した。次の満月の晩に、初めて会った柳の下で待っているから来てほしいと。
 そして約束の日。女は大尽のつけた監視の目を盗んで家を抜け出し、約束の柳の下で男を待った。しかし男は姿を現さなかったのだ。現れたのは、男から手紙を預かったという者だけだった。
 女は震える手で手紙を開いた。そこには何と書いてあるのだろうか。ひょっとしたら、別の場所に来るようにとの連絡の手紙かもしれないと、女は一縷の望みにすがりたかった。
 しかし、女は手紙を開いて愕然とした。そこには何にも書かれていなかったのだ。
 手紙は白紙だったのである。
 ―――私に言うことは、何もないということか。
 せめてここに来られない理由を教えてほしかった。見え透いた嘘でも良いから、本当はここに来たかったのだと書いていてほしかった、と女は思った。
 胸の奥がただただ痛くて、涙さえも出なかった。そして女は、翌日大尽の愛人になることを承知した。
 それからあっという間に時が流れる。
 女を迎えるときは非情ともいえる態度を見せた大尽だったが、迎えられた女はそれはそれは大切にされた。約束どおり老いた父や母の面倒も良く見てくれた。そして、大尽の妻が大尽に愛想を尽かして出て行くと、女は正式な妻に迎えられた。官だった大尽の妻になった女はそれで仙籍に入ることになり、人では一生が終わってしまうくらいの時間を変わらぬ姿で過ごすことになった。
 そんなある日、女は古びた物入れから一通の手紙を見つける。それはすっかり忘れていた、男からの手紙だった。
 捨ててしまったとばかり思っていた手紙を見つけて、女はただ懐かしさだけがこみ上げた。記憶にある胸の痛みさえ懐かしく感じるほど時間が経っていたのである。色々あったが、そう悪い人生でもなかったと女は振り返った。望むらくは、これまででたった一度身も焦がさんばかりに恋い慕った男が、幸せな一生を送ってくれていることだけだった。それを願いつつ、女は手紙を胸に抱いた。
 どのくらいそうしていたことか。再び手紙をしまおうとした女は、手紙の様子がおかしなことに気がついた。はっとして、手紙を開く。すると、白紙だったはずの手紙に文字が浮かんでいたのである。
 女は驚いて手紙を凝視した。いつの間にか浮かび上がっていた文字は、間違いなく記憶にある男の筆跡だった。女は、わけがわからぬまま、手紙に浮かび上がった文字を追った。
 手紙には、かつて約束の晩に現れなかったことがまず謝ってあった。そしてその理由として、女の父と母に頼まれたことが書いてあった。大尽の約束した金に目がくらんだのは男ではなく、自分の父と母だったことを女は初めて知った。
 『この手紙にちょっとした細工を施したのは、こんなことをあなたに告げても、あなたが苦しむだけだという思いがありつつも、私のあなたを思う気持ちが本物であったと、どんなに時間がかかっても届いてほしいという思いがあったからです。それに私は結局小心者です。かの方が申し出たような生活を、あなたやあなたの両親や、ご兄弟に保障してやれない自分の無力さを思い知らされて、身を引くのが一番良いことだと自分に言い聞かせたのです。そんな者が、あの時あなたに何と言えたでしょうか。
 それでも、かの方がどこまでも悪辣な人物なら、あなたが不幸になることがわかりきっていたのなら、私はあなたを連れてどこまでも逃げたでしょう。しかし、調べてみるとかの方はかなり立派な御仁のようです。あなたが穏やかな生活を送ることができる可能性は高いと思われます。しかし、それでも私はかの方に約束をしました。私はこの命ある限り、あなたが彼女を不幸にしていないか見続けていると。もし彼女が不幸だと感じたら、私はあなたのもとから彼女を連れ去ると。するとかの方は、憎らしいくらいの自信ある態度で、私の挑戦を受けるとおっしゃいました。その時はそうすれば良い。ただし、そうなる時はおそらく来ないだろう、と。
 この手紙を今読んでいるあなたは、幸せですか?幸せならば、この手紙のことは忘れてしまってください。ただ、もしそこにいるのが苦痛なら私を呼んでください。いつだってあなたのそばであなたを見守っていますから』
 女は、初めて知る男の思いに涙した。そして、最初は恨みさえした今の夫の深い愛情にも感謝した。自分が如何にいろんな人に愛され守られていたのか知って心が震えた。
 そうしているうちに手紙の文字は薄れて、またただの白紙に戻った。手紙は胸に抱いて暖めると文字が浮かび上がる仕掛けになっていたのだ。
 浩瀚の話によると、この物語に端を発し、人肌で暖めると文字が浮かび上がる特殊な液が開発され、一時期、恋人達の間でこの特殊な仕掛けが施された手紙をやり取りするのが流行ったらしい。一見白紙に見えることから他人に読まれる危険性が少ないという安心感と、人肌で暖めてから読む、というのが人々の甘美さをかきたてたようだ。しかし、本当に白紙と思って捨てられたり、意中ではない相手からもらった手紙だと、暖める気にならない、と中身も確認されずに破棄されたり、ということが多発したため、しだいに需要は下火となったらしい。片思いなら、せめてなりとも読んでもらいたいので、手紙を開けば直ぐに文字が目に飛び込んでくる普通の墨で書いたほうがいいということになったようだ。
 陽子は手紙を懐から取り出した。ほんのりとぬくもりの移った紙切れには、案の定、先ほどまではなかった短い一行が浮かび上がっている。しかし、それを見た陽子は目を見張った。少々意外なことが書いてあったからだ。
 『水仙の花』
 書いてあるのは、それだけだった。

 ―――は?水仙の花?
 陽子は思わず、ぽかんと口を開けてしまった。
 「水仙の花をご褒美にあげるってこと?」
 呟いて、陽子は首をかしげる。そんなわけはない。だって、水仙の花なら、今朝浩瀚にもらったばかりだからだ。官邸の庭に咲いていたという水仙を、浩瀚は朝一番に陽子に届けた。離園の水仙は見頃だろうかという話をしたばかりだったので、気を利かせてくれたのだと陽子は思っていた。
 そして陽子ははっとする。そういえばあの水仙は、懐紙を細長く折ったものでまとめてあった。それを思い出し、陽子はあわてて正寝にむかった。
 おそらく水仙よりも、その懐紙の方が重要だったのだ。
 ―――あの懐紙、どうしたっけ?
 陽子は走廊を駆けるように行きながら、朝の様子を思い返した。
 確か花をもらって、きれいだ、とか、ありがとう、とか、そんな言葉を交わしたあと、そばにいた女官に、花瓶にさしておいてとそのまま手渡したはずだ。
 ―――捨てられたかもしれない。
 そう思って陽子はわずかに顔をゆがめたが、例えそうでも女官は責められない。そしてもしそうなら、浩瀚に謝ってご褒美はあきらめるしかない。
 そんなことを考えつつ部屋に飛び込むと、水仙の花は小卓の上に生けられていた。そして懐紙は、朝見たまま水仙にくくりつけられていたのである。
 それを見て、陽子はなぜだか心底ほっとした。響くほどの大きな安堵の息をつき、そっと水仙に歩み寄る。花を傷つけぬように懐紙を解いて、陽子は中を確認した。白紙である。陽子はあがった息を整えるように呼吸しながら、紙を懐で温めた。
 しばらくして取り出す。すると案の定、そこに文字が浮かび上がった。
 『槐(えんじゅ)の木の下』
 今度はそこへ向かえ、ということらしかった。

 槐(えんじゅ)の木は、庭院の東に生えている。以前ひとり庭を散歩している時に浩瀚に捜しに来られ、その時に「これは何の木だ」と尋ねたことがあるので良く覚えていた。
 「これは槐(えんじゅ)と申します。豆科の植物で、花が終わると数珠のような実がなります。学問と権威の象徴で尊貴の木とされております。蓬莱での花言葉では、少々違った意味合いがあるようですが」
 「花言葉?さて、なんだろう。私は、そういうのに詳しくないからな」
 「さようで」
 浩瀚はわずかに微笑みながらそういうと、なんでもないことのように陽子を執務室に戻るよう促した。それで話はそれきりで、その時は陽子も気にもとめなかったが、
 「そういえば、槐の花言葉って、なんだったんだろう」
 陽子はいまさらながらに、今まで調べようともしなかったことが悔やまれた。浩瀚がこんなに回りくどいことをするのは、きっと何か意味があるのだ。しかし、ヒントが撒き散らしてあるように感じるのに、陽子はひとつもすくえていない気がした。
 やがて目当ての槐の木にたどり着く。その下を注意深く見やれば、根元から生えた若木に紙が結び付けてあった。陽子はそっと解いて中を確認する。今度もやはりただの白い紙。陽子は懐に入れて紙きれを暖めた。
 しばらくして取り出すと、今度も浮かび上がったのはたったの一行。
 『そのまま東へ』
 陽子は記された通りに、東へと庭院を進んだ。

 日が沈もうとしていた。辺りがしだいに薄闇に包まれてくる。空はまだ茜色に輝いてはいたが、生い茂った木々の合間を行く陽子の足元は早くもおぼつかなくなり始めていた。心細い。無意識のうちにそう思った時、道の先に小さな明かりが見えた。近寄って見ればそれは地面に置かれた小さな灯篭で、足元を照らすようにぽつりぽつりと置かれている。陽子はその灯篭の明かりに導かれて、庭をさらに東へ東へと進んだ。
 やがて、目の前に小さな建物が現れた。戸の前には灯火がともされ、朱塗りの柱や壁をあたたかく照らし出している。
 どうやらここが目的地らしい。陽子はそう感じて、戸を押し開けて中へと入った。
 入って陽子は目を見張る。
 小さな室内は、華やかに飾り付けられていた。特に、天上の中央から四隅に向かって掛けられた紙の飾り。それはこちらでは見たことがない飾り付けだったが、陽子の懐かしい記憶の部分を揺さぶった。そして、部屋の中央には小卓がひとつ。その上に乗っている物を見て、陽子は更に驚く。
 まさか、と思いつつ近寄って、その白くて丸い物を確認した。
 それは、やはりどう見てもケーキだった。
 そのケーキの中央には、『祝誕生日』の文字。それを囲むように立てられた蝋燭がゆらゆらと小さな炎を揺らしている。
 ―――これは一体。
 記憶にある蓬莱風の誕生日祝い。それがどうしてこの部屋で再現されているのかわからずに戸惑っていると、
 「さあ、主上。蝋燭の火を思い切り吹き消して下さいませ」
 急に声がして、陽子は驚いて視線を向けた。そこには浩瀚が、にこやかな笑みを浮かべて立っていた。
 「蓬莱では、お誕生日にそうする習わしなのでしょう?」
 「お誕生日」
 陽子は言われた言葉を繰り返し、ようやく納得したように表情を崩した。
 「ああ、そういうことだったのか」
 「さあ、早く。蝋燭の炎で、せっかくのけぇきが燃えてしまいますよ」
 促されて陽子は蝋燭を吹き消す。幼い頃、あれほどあこがれたことだったが、なんだかくすぐったい気分だった。
 「お誕生日、おめでとうございます」
 「ありがとう。でも、なんだか照れくさいな」
 陽子ははにかみながら視線を上げた。いつもと雰囲気の違うような浩瀚を見るのはなぜだか照れくさかった。
 「それにしたって、いつの間にこんな準備していたんだ。それにケーキだって」
 陽子は改めて卓上のケーキを見やった。こちらで洋菓子を手に入れるのはまず無理なはずだ。
 「実は密かに作り方を入手いたしまして。材料自体はこちらで手に入らないわけではない物ばかりだとわかりましたので、あとはいかにおいしく作るかで苦労いたしました」
 「まさか、あのケーキってお前が作ったのか!?」
 「はい、他に誰がおりましょうか」
 さらりと答える浩瀚に、陽子は目を丸くしながらも、確かにこいつなら何でもできてしまいそうだと納得してしまった。ただ、毎日の激務の中で、よくケーキ作り研究をする時間が作り出せたものだと、感心するより半ばあきれてしまう。
 「蓬莱では、お誕生日のお祝いにけぇきという菓子は欠かせないものだと伺いましたので、何としても準備したかったのです。生地の部分をふんわりしっとりに仕上げるのがなかなかに難しかったですが、色々と改良を重ねて、なかなかよい物に出来上がったかと」
 どうぞご賞味ください、と言われて、陽子は恐る恐る一口食べてみる。刹那、陽子はそのあまりのおいしさに驚きを通り越して感動すら覚えた。
 「お前、パティシエになれるぞ!」
 「は、ぱてぃしえ、ですか?」
 「洋菓子職人だ。こういうケーキとかを作る職人だよ。これ、最高においしい。ひょっとしたら今まで食べたケーキの中で一番おいしいかもしれない!」
 クリームとスポンジとの分量が絶妙で、浩瀚の言う通りスポンジのしっとり感がたまらない。甘さ控えめで、いくらでもいけそうである。陽子は夢中になって、気づけばホールをひとりでぺろりと食べてしまっていた。
 「最高のご褒美だ。浩瀚ありがとう!」
 久々に食べた洋菓子の食感とおいしいケーキに満足し気分が高揚した陽子は、思わず浩瀚に飛びついていた。
 首に腕を回されてぎゅっと抱きしめられた浩瀚は、一瞬だけ驚いた表情をしたが、すぐさま笑みを浮かべて自分も陽子の背に手を回した。
 「気に入っていただけたようで、うれしゅうございます」
 「ああ、こんなにびっくりで、こんなにうれしい誕生日はない」
 「では、誕生日の贈り物も受け取ってくださいませ」
 「え、まだあるのか?」
 「誕生日のお祝いには、贈り物も欠かせないものでございましょう?」
 浩瀚は言って、小さな箱を陽子に渡す。開けると中には、小さな赤い石の飾りのついた首飾りが入っていた。
 赤い石の美しさはそれだけで目を引くが、組み合わせて花のようにも見える意匠にしてあるのが何ともかわいらしい。そしてそれが金鎖の先についているだけの簡素な作りが一層陽子の気持ちをひきつけた。
 「きれいだ。それにとってもかわいい」
 「その赤い石は柘榴石と申します。蓬莱では、主上のお生まれの月の誕生石がこの石だとお聞きしました。それに、この石は魔よけの効果があると言われ、よくお守りに使われます。お守り代わりにしてくださいませ」
 浩瀚はそういうと、鎖を持ちあげて陽子の首に付けてやる。浩瀚がつけやすいようにと陽子が髪を持ち上げたので、あらわになったうなじに浩瀚はどきりと胸を高鳴らせた。
 柘榴石には「変わらぬ愛情」の意味もある。しかし、それは今はまだ、伝えなくともいいこと。あの物語の中で男が託した手紙のように、いつか届けばいい。今は彼女の手に自分の思いをこめた物が渡るだけで充分だ。
 止め具をそっと掛けて、浩瀚は惜しみながらうなじに触れていた指先を離す。
 「ああ、よくお似合いです」
 陽子の嬉しそうな笑顔に、浩瀚はこの上ない幸せを感じていた。


 
 
 
  誕生日の差し上げものということで誕生日をテーマに書いた作品です。誕生石のくだりは差し上げた方の誕生月にあわせたもので、陽子の誕生日とはおそらく違うと思います。  
 
     
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