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「泡沫(うたかた)の夢」 |
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月明かりに照らされた牀榻に、香がゆるゆるとくゆる。
臥牀に横たわる少女は夢と現の狭間を漂いながら、そそるような媚態を己にさらしていた。
緋色の髪が月明かりにも鮮やかで、男はそれを一房手にとってそっと口付ける。
その滑らかな手触りは極上の絹のよう。その手触りのよさに、ほうっとひとつ息をついて少女を見下ろすと、緩慢な動作で少女が視線を上げて己を見た。
力ない翡翠の瞳は、昼間とは違う色をたたえ、男を誘っているように見える。
そう思って男は苦笑した。
―――何を。己が謀ったことであるというのに……。
そう、今少女は香に酔っているに過ぎぬ。
今が夢か現か、おそらくわかっていないだろう。
滑らかな頬を指の甲で撫で、わずかに開いた唇に吸い寄せられるように身を傾けた。
想像以上に柔らかなその感触に男は酔う。
唇を重ねるだけでは満足できず、口内に侵入して歯列を割り執拗に舌を絡ませた。その甘美さに一瞬我を忘れ、息継ぎを許さぬほどに貪ると、苦しそうな呻きと同時にあふれた唾液が少女の顎を伝って流れていく。それを追うように舌を這わせて首筋を嘗め上げると、男はそこにひとつ己の証を刻んだ。
刹那、少女が小さく嬌声を上げる。
その声に男の欲情が煽られた。
たまらず帯を解き、少女の胸元を開く。暴かれた双丘の頂はつんと起ち、男はそれを口に含んで転がした。
少女の体がびくんとはねる。
―――ああ、なんと甘美な。
柔らかな弾力を片方の手のひらで弄びながら、男は口元に笑みを浮かべた。
今夜すべて味わいつくしてやろう。
すべては泡沫(うたかた)の夢なのだから。 |
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